亥「天狗あらわる」七番

 

 
(七右衛門のナレーション)
 この地が、まだ松江と呼ばれる前の戦国時代。東に尼子、西に毛利といった大大名。その狭間にあるイム部の郡で特定の領主に服することなく、自治を行い、栄えている郷があった。この物語はこの地の自治と繁栄を影で支えた七人の女の物語である。
 
 タイトル:「天狗あらわる-7」
 
 
 
お堀、後ろで火矢を構えるお侍(岸)にうなずく岸が火矢を放つと、甲高い音が。鏑矢の火矢。それを合図に、川の両岸から、修理の船団めがけて、矢弾石あらゆるものが飛んでいく。
 
大橋川を西進する修理の船団に、弓・鉄砲・石・焙烙玉、ありとあらゆるものが飛んでいき、最初こそ、はでに水柱をあげるのみだったが、次第に、軌道を修正し、船にあたる。漁師船クラスが多く、一部はいかだに、兵をのせただけのものも。そのため、修理の船団は、次々に打ち沈められていく。
(遠目に、水に落ちた兵がとけていくような様子も) 
 
それから逃れるように、カラカラ橋の下に逃げ込む船もあるが、今度は上から石が落とされる。
 
茶羅丸:船ごと、ぶちあてぃ。竹橋ならもろいぞ。
 
修理側の船が次々にあたり、カラカラ橋が崩れ去る。その隙間をぬって、味方の兵の船を犠牲にしつつ、修理の乗船が、愛宕山の下の岸にたどり着く(当時の宍道湖岸がそうだった)わあらわらと、修理の兵が降り立ち、愛宕さんの石段を駆け上がる。その音を聞き、山伝いに、現在の清光院のほうに逃げる親子。しかし、体が弱っている父親は、途中で足を滑らし崖の下に。
あわてて、娘が、滑り降りる。
 
娘:パッパ!
バテレン:お前だけでも、逃げよ。
遠巻きに、村の者が見るが、すぐ後ろに迫っている修理の兵に恐れをなし、近づいては来ない。
 娘は、父に肩を貸し、なんとか歩くが、ついに、修理の兵たちに追いつかれる。
修理:ほーなるほど、それなりに、味のある顔じゃわい。さあ、まずは生け捕れ。
 娘は、父を振り切るように落とすと、両手から火炎弾を放つ。大騒ぎになる。修理の兵たち。が、じりじりと包囲を狭め、あと一息というところで、いきなり、娘が恐竜に化け、次々と修理の兵を食い散らかす。
 遠巻きに見ていた、村の者にもその恐竜が見える(集団催眠)。
村衆:おろちじゃ、おろち!
実際に、くわえられて飛ばされた修理の兵がたたきつけられ、木っ端みじんになる。
村衆:愛宕さんの神罰じゃあ。
 
その村衆の背後を回るようにして、足軽のような一段がおろちの後ろに。
そして、畝堀衆が、おろちの後方から、修理の一団に、
畝堀:これ以上、神域をおかすなら、うちらが相手だ。
と牽制する。
修理:まだ…
というのを、正月が後ろに突き飛ばし
正月:引け、引け。退き貝ならせ。
と、撤退命令。
 
なんとか、船に乗って、逃げ出す修理。
右往左往している、味方船団を盾代わりにし、東のほうに逃げ去る。
 
畝堀が、倒れている娘を抱え上げて、引き上げる。
畝堀:それにしても、ふしぎ、ってやつはすごいもんだね。
 
畝堀衆が振り返ると、八軒屋の川岸では、逃げていく修理の船団を見ながら、勝鬨と歓声があがる。
 
畝堀:さあ、引き上げよう。愛宕さんの修繕は、また頼まれてから。ただ仕事をすることもないやね。
 
この時の恐竜の恐ろしい姿が、土地の者に記憶され、百年後に、亀の化け物が、町で暴れるという怪談となるのだが、それはまた、別なお話。
 
 次回(魯)予告(しちナレ)
 さあて、大一番が終わった後のイムベの里、だがだが、まだ修理一党の悪だくみは止まず。さたに新たな火種も持ち上がり…ともかく、次回「走るネズミ」こう御期待。
 
エンディングテーマ(誰が為に)よもぎ版。 
 
CMあけ。
 
 
葱注:
 このお話は歴史上の話を参考にした、あくまでフィクションであり、一部歴史的事実と違う内容や、歴史的にはっきりしていない内容が含まれます。
 
 
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