亥「天狗あらわる」六番

(七右衛門のナレーション)
 この地が、まだ松江と呼ばれる前の戦国時代。東に尼子、西に毛利といった大大名。その狭間にあるイム部の郡で特定の領主に服することなく、自治を行い、栄えている郷があった。この物語はこの地の自治と繁栄を影で支えた七人の女の物語である。
 
 タイトル:「天狗あらわる-6」
 
(地図で、乃木から揖屋へ)
一方こちらは、修理の屋敷。
黒ムックに、衣装は芋虫・毛虫の生えた、南蛮マント。
(そんな衣装を好んで着るものの神経が分からないというほどの。)
修理:なんとしても 、天狗をつかまえて、姫のご機嫌をとるのぢゃ。
家来:はっ!
(が、顔はしぶしぶといった表情)
(その修理の視線の先には、庭を挟んで建つ庵が)
 
 その庵に障子に浮かぶ、「姫」らしき影。
 
その庭を戦支度をした、兵士たちが無言で右往左往。
 (どろ人形、この時点ではそれは明らかになっていないが、兵士なので、一様に顔が土気色である)
 
こうして、修理は、天狗討伐の軍をイム部の郷へと向ける。
修理:茶羅丸、船出の用意は如何に。
茶羅丸:いつでもよ。
脇林正月:おい、修理は親方、棟梁なんだから。
茶羅丸:それがし、も、水の組の棟梁だがな。
脇林:じゃあ、修理は、棟梁の棟梁だ。
茶羅丸:ふん、じゃあ、大棟梁様か。まあ、いいや。くれるものくれるならな。
修理:分かっておる。天狗を生け捕りにして、後は、好きに分捕れ。
茶羅丸:ようし、そうこなくちゃ、おんな、おんな。
と駆け出す茶羅丸の後ろ姿を見ながら
正月:あれで水の組の頭がつとまるものかね。
振り返って、奥に引っ込む修理の背を見ながら
正月:まあ、あれが土の組の棟梁というのも、無理があろうものだが。それにしても、天の組がまさか裏切るとはな、思わなんだ。
 
しちナレ:はて、水の組、地の組、天の組とは…?それはさておき、修理の軍、水の組の茶羅丸の船に乗り込み、一路、イム部の郷へ。
(地図で、揖屋から宍道湖方面へ矢印)
 
消息屋の七右衛門が街の往来で大声を上げる。
さあ、さあ、大変だよ。井中東出雲守修理の軍が、やってくる。表向き、世を惑わす天狗をとらえるとかぬかしているが、修理の軍の取った後は、山賊・盗賊よりもひどい、略奪の有様。物だけでなく、人までさらっちまう。さらった人は、老若男女、修理とその配下の者の慰み者になるって話だ。修理は、老若男女に畜生物の怪なんでもござっれの悪食。もしや天狗も?
 さあ、天狗のいる愛宕さんから離れなくちゃ。
(地図がクローズアップ。当時は湖面に接していた愛宕さんのほうへ矢印が曲がる)
そして、愛宕神社にクローズアップ。その背後の山の粗末な小屋
 
寝込んだ父親らしき天狗とその介抱をする娘らしき天狗。天狗と言っても、いわゆる欧米人とハーフの子のよう。二人は、誰にもわからぬ言語で語り合う。
途中から、( )で字幕が入る。
 
(美怪):父上、これがお薬だとか。でもお医者に診てもらったほうが。
(ばてれん):言葉が分からぬうえ、この恰好では…これまでの場所でも立ち退かざるを江なんだ。
(美怪):でも、ここの人は親切よ。少なくとも、私のことは、あやしの不思議の術(手品)をやる、軽業師のように思ってる。銭のある人は銭を払い、ない人は自分ところでとれた野菜やら、魚やらくれる。銭も、多分、おいしゃにかかれるくらいはあると思うの。
(ばてれん):いや、そうは…
言葉が続かず、せき込むばてれん。
 
一方、船着き場の近くでは、片肌脱いで、火縄を振り回している威勢のいい姉御が。
お堀:お前たち、ありったけの飛び道具、持ってきな。なけりゃ、な、恋太、そこんとこの石、投げてやれ。南蛮人に投げ方習ったんだったよね?
おう、と返事をしたのは、筋骨たくましい、でも、よく顔と胸元を見ると、筋骨たくましい大女。恋太とその仲間は網に石というか岩を入れ、それをしばり、ハンマー投げの要領で投げるらしい。その間にも、火縄、石火矢、弓など、様々な飛び道具が準備される。
お堀:さあ、これは戦だよ、旗印を立てな。
配下の者が立てる旗は大漁旗に似た「天鷺屋」の文字が。
お堀:お、あれじゃないかい。皆、いいかい、修理たちは刀槍はそろえているが、飛び道具は持ってない。おもいっきりかわいがってやんな。
皆、無言で頷く。
お堀、後ろで火矢を構えるお侍(岸)にうなずく岸が火矢を放つと、甲高い音が。鏑矢の火矢。それを合図に、川の両岸から、修理の船団めがけて、矢弾石あらゆるものが飛んでいく。
 
 次回(第七話)予告(しちナレ)
 ついに、登場人物、誰がどうなってるのかわからないまま、戦が始まる。とにもかくにも、次回は見逃せない大戦。こう御期待。
 
エンディングテーマ(誰が為に)よもぎ版。 
 
CMあけ。
 
 
葱注:
 このお話は歴史上の話を参考にした、あくまでフィクションであり、一部歴史的事実と違う内容や、歴史的にはっきりしていない内容が含まれます。
 
 
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